2004/07/12
蟹入道の毒にやられた鋼殻は名も無き村の璽武じいに助けられた。
三人共璽武じいの家で呑気にしているが、盗まれた武具はどうする気だ?
そして、烈帝城へは急がなくていいのか!?



新SD戦国伝 機動武者大戦 後日談 〜副官たちのその後〜
<第五話 〜転機〜>



「じーさん、おかわりッ!」
「鋼殻、お前もう何杯目だよ・・・・・さすがに食いすぎだろ?」
 黄金蜘蛛はしし鍋十杯目のおかわりをする鋼殻を見、あきれて言った。
「えー? いいだろ別に、まだあるし。」
 鋼殻は気にせずに、璽武じいからしし鍋のおかわりを受け取った。そしてそれをガツガツと、あっという間に平らげてしまった。
「しかし・・・こんなにのんびりしていていいのかね?」
 鋼殻には劣るものの既に五杯目のおかわりを済ませながら、幻妙が言った。
「・・・・・・鋼殻並にのんびりしているお前の言うセリフじゃないだろ・・・・・・」 「いや、別にのんびりしていってくれて構わんよ。」
 呆れている黄金蜘蛛に、璽武じいは言った。
「・・・のんびりしていいとか言いながら、本当は薪割りその他の雑用を俺たちに任せようとしてるんじゃないのか?」
 そう言われた璽武じいは、聞こえないフリをしてごまかし、自分もしし鍋をおかわりした。
 ・・・何でコイツらってこんなに食べられるんだろう・・・
 一人あまりおかわりをしていない黄金蜘蛛は、いまだに食べ続ける三人を見ながら思った。三人の食欲以上に、妙に沢山あるしし鍋のほうも不思議だが。
「・・・なぁ、お前らあと何杯食う気なんだ?」
 黄金蜘蛛が尋ねると、三人は一旦箸を止めた。だが、三人同時に首をかしげ、再び箸を動かし出す。
 ・・・つーか、幻妙も術士系の体格のクセによく食うな・・・
 そう思いながら、黄金蜘蛛は三人を食事が終わるまで呆然と見ていた。

「ところで三人共、今思ったんじゃが、おんしらは何故この村に来たんじゃ? まさか、わざわざ解毒薬を求めてこんな辺境まで来たわけじゃないじゃろ?」
 食事が終わって落ち着いた所で、璽武じいがそんな話題を切り出した。
「あぁ、実は俺らは隊長たちを追って烈帝城を目指してんだ! でも途中で道に迷うわ、武器・防具が盗まれるわ、盗賊に終われてがけから落ちるわでさー・・・・・・って、あ!!」
 鋼殻が笑いながら説明していたが、そこで三人はハッとした。
「そうだ! こんなのんびりしてる場合じゃない!」
「さっさと隊長たちに追いつかねぇとッ!!」
「てかそれ以前に、私の妖蛇の杖ッ!!」
 そう、盗賊に追われたり鋼殻が毒をくらったりですっかり忘れていたが、三人には覇道闇軍団の隊長たちを合流とする大きな目的がある。しかも武器・防具が盗まれた為それも探し出しておく必要があった。
「ヤベェ、どうする!? よく考えたえらもうここがどこなのかだってわかんねぇじゃん!!」
 まず最初に鋼殻が言った。
「それもそうだが、我々の武具は一体誰に盗まれたんだ!?」
「一番考えられるのは、やっぱりあの時の連中じゃないのか!?」
「じゃあとりあえずあの崖登って奴らを探すか!?」
「待て、同じ場所にまだいるとは限らんだろ!」
「だったら武具は諦めると言うのか? お前ら二人の分はどうでもいいが、私の妖蛇の杖が返ってこないのは困る!」
 三人は半ば慌てた状態で言いあった。そのそばでは璽武じいが何か思い出そうとしているかのように頭を傾けていた。
「・・・昨日の晩じゃったかのう・・・・・・斧やら鎌やら杖やら、その他にも色々と持った連中が村の近くを通っておったぞ?」
 璽武じいがつぶやいた瞬間、三人の視線がそちらに集中した。
「・・・それって、色とか、細かい特徴とかは?」
 黄金蜘蛛が聞いた。
「連中の持っていた物か? 何となく強そうな斧や、鋼色の大鎌、蛇の巻きついた杖、その他にも黄緑の鎧やら紫の服やら、色々持っておったぞ。」
 自分たちの武器・防具に間違いない! 三人は確信した。
「・・・じいさん、その連中の向かった方向、教えてくれねーかな。」

 三人は璽武じいに別れを告げ、自分たちの武具を盗んだと思われる連中の後を追っていた。村の近くは森となっていたが、璽武じいの話では連中はこの森の中に入っていったとのことであった。
「昨日の晩、と言うともうかなり遠くまで行ってしまったかも知れないな。」
 璽武じいの教えてくれた方向へ向かって走りながら、黄金蜘蛛がつぶやいた。
「とりあえず追いついて武器取り返せばこっちのもんだろ。何とかなるって!」
「追いつけて、更に武器を取り返せればな。・・・つーか鋼殻、お前どっちかっつーと敵を叩きのめすことを目的にしてないか?」
「それが目的だろ?」
 ・・・まず敵を見つけなければいけないのに・・・
 そう思って幻妙は溜息をついた。
「! 二人共、止まれ!」
 不意に黄金蜘蛛がそう言って、二人を腕で制した。
「お!?」
「何だ?」
 二人が止まったのを確認すると、黄金蜘蛛は注意深く周囲を見回した。幻妙と鋼殻は、黄金蜘蛛が何をしようとしているのかよく分からない。
「・・・黄金蜘蛛、何かあったのか?」
「シッ、静かに! ・・・何か聞こえないか?」
「へ?」
 三人は耳を澄まし、周囲の音を探った。風で木が揺れる音、鳥の鳴き声・・・気になる音は感じられない。しかし、次の瞬間――
 ドォン!
 何かが急に森の空気を振動させた。それは遠くからの音であったが、かなり大きいと思われた。
「な、何だ今の!?」
 鋼殻は慌てて言った。
「分からん、が、さっきはもっと遠くから聞こえた気がするんだ。」
 黄金蜘蛛はそう言ってあたりを見回した。音の出所を探っているようだったので幻妙と鋼殻もあたりを見回したが、何の音なのかはやはり分からなかった。
「あーもー! 何だったんだよ一体!?」
 だんだんいらだってきて鋼殻が大声を上げた。すると――
 ゴォンッ! メキメキメキ・・・ズゥン!
 明らかに先ほどよりも近くで、大きな音がした。しかも、かなり盛大に。
「ま、またか!?」
「しかもかなり近いぞ!!」
「もしかして近付いて来てンじゃねェのか!?」
 三人はそう言いながら、音のしたほうを向いた。メキメキと木の倒れる音が、こちらにだんだんと近付いてきているのが分かった。
「何だろう・・・妖怪か・・・?」
 ドドドドドッ・・・
 何かが走ってくるかのような音がはっきりと聞こえてきた。三人は息を飲む。そして次の瞬間――
 ゴオッ!!!
 何か巨大なモノ――金剛爆進丸【こんごうばくしんまる】形態級の大きさ――が、三人の前を超高速で走り去っていった。しかも、そのモノの前にはヒトらしき者が走っていたような気がする。三人はあまりに突然に目の前に現れたモノに、しばし言葉を失った。
「・・・な、何か今の・・・・・・どっかで見なかったっけ・・・?」
「・・・・・・何か異常なほどに巨大だったけど・・・・・・もしかしてあれ、呪怪入道【じゅかいにゅうどう】・・・・・・?」
 呪怪入道とは丸太を担いだ妖怪で、覇道闇軍団でもよく率いていた。しかし、その大きさが異常だ。普通なら武者たちよりも少し大きいくらいで、金剛爆進丸並の身長など持っているはずなかった。
「・・・つーかさ、今、明らかに何か追いかけられてたよな・・・」
 三人はいまだにア然としたままの表情で、巨大呪怪入道の去っていたほうを眺めた。そこで黄金蜘蛛は、その先にバラバラと何かが落ちているのに気がついた。
「? これって・・・?」
 黄金蜘蛛は落ちているその物を拾い上げた。何とそれは、多くの武器や防具であった。しかも、その中に――
「!! 俺の毒斧に六足長刀!!」
「妖蛇の杖が!」
「俺の斬血鎌【ざんけつれん】もだ!」
 そこには、三人の盗まれた武器や防具がすべて入っていたのだ。他にも、誰のものかは分からないが刀やら槍やら、色々なモノがばらまかれていた。
「巨大呪怪入道が通ったあとだというのにどれも破損していない・・・・・・ということは、これはさっき追われていた者が落としたのか?」
 黄金蜘蛛が冷静に分析している間に、他の二人は自分の武具を身につけていた。
「うーん、やっぱコイツがねーと落ちつかねェな!」
 鋼殻は斬血鎌を振り回しながら、言った。
「とりあえず、これで目的の一つは果たしたわけだな。」
 妖蛇の杖が壊されたりしていないことを確認し、幻妙が言った。確かに盗まれたものを取り返した以上、これで心置きなく烈帝上を目指せるのだ。
「・・・ところで、さっきの呪怪入道、ヒトを追いかけてたよな・・・確か。」
 ふと、黄金蜘蛛がつぶやいた。
「ん? ・・・あぁ、たぶん。おおかた、我々の武具を盗んだ奴だろうがな。」
 幻妙が答えると、黄金蜘蛛は腕を組んで何か考え出したようであった。
「黄金蜘蛛、どうかしたのか? ・・・もしかして、さっきのヤツが気になるのか?」
「・・・あぁ。何でヒトが追われてるのか、しかも追っ手の呪怪入道があんなにも巨大なのかは分からないが・・・・・・ほうっておいたら、ただではすまないんじゃないのか、と思ってな・・・」
 鋼殻に聞かれた黄金蜘蛛が答えると、幻妙はあきれた。
「・・・あのなぁ、別に助ける義理はないだろ? だいたい我々の武具を盗んだ奴かも知れないのに――」
「だが見捨てていいのか?」
 黄金蜘蛛は真顔で言った。
「思えば俺たちは、今まで天宮で非道の限りを尽くしてきた。・・・それは、天宮が覇道国にしたことと同等・・・いや、それ以上の罪だ。俺は思うんだ、我々は覇道国へ帰る前に、できるだけ償いをすべきなのだろう、と。」
「・・・それで・・・どうするんだ?」
 鋼殻は聞いた。
「・・・さっきの奴を、助ける。」
 返答を聞いた瞬間、鋼殻と幻妙は耳を疑った。
「待てよ黄金蜘蛛! あいつは俺たちの武具を盗んだ野郎かもしれないんだぜ!?」
「そうだ! 償いが必要だとしても、わざわざあいつを助ける理由があるか!?」
「あいつが泥棒でもそうでなくても関係ない! 俺たちが、もうこの天宮で人を殺すわけにはいかないんだ。俺としては、見殺しにすることも含めて。」
 黄金蜘蛛は明らかに真剣だった。このままほうっておけば、恐らく一人でも助けに向かうであろう。二人は少しの間黙っていた。
「・・・仕方がない、付き合おう。」
 幻妙がまず口を開いた。
「分かった、じゃあ俺も行くぜ。」
 幻妙に続き、鋼殻もそう決心した。
「・・・ありがとう、すまないな。よし、行こう!」
 黄金蜘蛛がそう言い、三人は先ほどの巨大呪怪入道の後を追った。



盗まれた武具を取り戻したものの、もう少し寄り道することを選んだ三人。
そして巨大呪怪入道を倒した後は――

次回、「再会へ」 いよいよ最終回!

巨大呪怪入道「グオオォォッ! ギャッスラ――――!!!」
・・・。


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