2003/01/18
烈帝城を目指す覇道闇軍団の副官達。
武具がなくなるわ谷底に落ちるわでもうさんざん。
とりあえず今は、目の前の蟹入道を倒さねばならない!!



新SD戦国伝 機動武者大戦 後日談 〜副官たちのその後〜
<第四話 〜危機〜>



 術法も武器もなく、三人と蟹入道のにらみ合いは続いていた。副官三人は蟹入道の動きを見張り続けたが、対する蟹入道の方もこちらの出かたを見計らっているかのようだった。
「黄金蜘蛛ッ・・・何かいい作戦はないのか!?」
 痺れをきらしかけた幻妙が黄金蜘蛛に問い掛けた。
「そんな事を言われても・・・物理攻撃しかない今、下手に動く訳には・・・」
「あ〜〜〜〜〜っ、じれってーな〜〜〜ッ!!」
 黄金蜘蛛が返事に困っていた所、一足先に鋼殻が痺れを切らしてしまった。
「行くぜ蟹道楽ッッ!! おおおおぉっ!!!」
「!!」
「鋼殻っ!!」
 黄金蜘蛛と幻妙は慌てて鋼殻を止めようと手を伸ばしたが、鋼殻は二人の間をすり抜けて蟹入道の方へと向かって行ってしまった。
「グワ〜〜ラ シャキシャキ!! 猛毒汁!!」
 蟹入道から吐き出された毒汁が、それをかわしきれなかった鋼殻の腕にかかった。
「んな攻撃効くかよっ!! 覇道闇軍団の力思い知れっ、目茶苦茶連続拳【バリバリバルカンパンチ】ッッ!!!」
 蟹入道の毒をものともせず、鋼殻は蟹入道に連続パンチを喰らわせた。
「ぐぎゃ―――――っ!!」
 蟹入道はおぞましい程の断末魔を上げ、鋼殻の最後の一撃と同時に吹っ飛んだ。その様子を見、黄金蜘蛛と幻妙はア然とする。
「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十!! ぃよっしゃ――――ッ!!」
 意味不明の10カウントを終え、鋼殻勝利の雄叫びが響いた。
「・・・何か・・・」
「・・・慎重になっていた俺たちがバカみたいに見えてくるな・・・。」
「どうだ黄金蜘蛛、幻妙ッ!! コレが武闘隊副官・鋼殻さまの力だぁっ!!」
 まだア然としている二人の方へと向き直り、鋼殻が笑いながら言った。
「・・・あぁ、すごいよ。」
 幻妙が呆れたような声で答えた。
「・・・と、とりあえず・・・蟹入道も倒したことだ、村か何かを探しにでも出発しよう。」
 そう黄金蜘蛛が言った。
「そうだなっ、腹も減ったし!」
 鋼殻が元気に答えた。
「・・・村人が俺たちに食い物をくれるかどうか分からんがな・・・。」
「幻妙、もしかしたら、いっそのこと鋼殻のように楽観的になったほうが今は楽かも知れんぞ。」
 ブツブツと鋼殻の言うことを批判していた幻妙に、黄金蜘蛛がささやいた。
「・・・じゃあ行くか。」
 たき火の火を踏み消し、黄金蜘蛛が二人に言った。
「あぁ。」
「・・・。」
「・・・ん? 鋼殻、どうした。」
 黄金蜘蛛に返事をしたのは幻妙のみで、何故か急に鋼殻が静かになった。変だと思い二人が後ろの鋼殻を振り返ると、鋼殻は何故かその場に転倒していた。
「鋼殻、転んだか?」
 黄金蜘蛛はそう言って鋼殻に歩み寄った。が、鋼殻は様子がおかしかった。
「・・・!! まさか!!」
 黄金蜘蛛は鋼殻を見、何かに気付いたようであった。
「何だ? 黄金蜘蛛」
 幻妙は黄金蜘蛛に問いかけた。
「幻妙、さっき鋼殻は蟹入道の猛毒汁をくらっていたな?」
「あぁ。蟹入道の毒は強力な上、即効性にも優れ・・・・・あ。」
 鋼殻は確かに、先程の戦闘で猛毒汁を腕にくらっていた。鋼殻は効かないと言っていたが、普通に考えて効いていないはずはないのだ。
「さ、さっきは何ともなかったのでは・・・?」
「崖から落下して大した事のなかった鋼殻だ、常人と同じ体のつくりとは限らん。」
 黄金蜘蛛はそう言うと、鋼殻を背にかついだ。
「幻妙、急いで村を探そう。いくら鋼殻が普通じゃないとは言え、このままでは長く持たない可能性も決して捨て切れはしない! 万屋で解毒薬を手に入れよう。」
 黄金蜘蛛はそう言い、駆け出した。
「あ、おい、黄金蜘蛛! そっちに村や町はあるのかっ!?」
「知らん!!」
 幻妙の質問に無責任な返答をしながら、黄金蜘蛛はささと先へ進んでしまう。幻妙は、慌ててその後を追った。

 気を失ってどれ程の時間が経っただろうか? 外はだいぶ日が傾いてきていたその頃、鋼殻はふと目を開いた。
「・・・うーん・・・ここは・・・? ・・・俺は何をして・・・?」
「気が付いたようだな。」
 鋼殻は、その場で起き上がると幻妙の声に気が付いた。
「・・・あれ? 何だここ・・・?」
 鋼殻は辺りをきょろきょろと見回した。そこは建物の中らしく、自分は布団の上にいた。室内には幻妙と黄金蜘蛛、それと見知らぬ璽武【ジム】じい(←村人)がいる。
「・・・幻妙、ここはどこだ?」
「名もなき村のボロ家だ。」
 ボグッ!
 そう言った途端、幻妙に後ろから黄金蜘蛛の拳がぶつかった。
「お前なァ・・・流石に失礼だぞ。こういう時はそう思っても口に出さないでおくべきだ。」
「・・・???」
 鋼殻は状況が飲み込めず、ただ黙って今の二人のやり取りを見た。幻妙と黄金蜘蛛はそんな鋼殻を無視して口喧嘩を始めた。
「・・・なぁそこのじーさん、あんた誰だ? 何で俺らはここにいるんだ?」
 黄金蜘蛛も幻妙も状況を説明しそうになったので、鋼殻は家の中にいるもう一人の人物に訪ねた。
「わしゃあこのボロ家に住んどるんじゃ。ボロ家はいいぞぉ?」
 ・・・黄金蜘蛛と幻妙の口喧嘩が、無駄だ・・・・。
 璽武じいが自分の家をボロ家と言い切ったので、鋼殻は密かにそう思った。
「ワシがたまたま万屋へ行ったら、偶然あんたらが店にいるのに出くわしてのぉ。どうも二人は毒で倒れたあんたに解毒薬を買いたかったそうじゃが、何せこの村には解毒薬が売っておらんのでな。ワシが、家にあった薬を譲ったんじゃよ。」
 璽武じいはそう説明した。
「へー、そうか。すまんな、じいさん。」
 鋼殻はとりあえず自分がこの璽武じいに助けられたことが分かったので、礼を言った。
「・・・しかしじーさん、覇道闇軍団の俺たちを、よく自分の家に入れたもんだなぁ。いい度胸してんじゃねーか。」
「わあっ!! 鋼殻っ!!」
 幻妙と黄金蜘蛛は鋼殻が自分たちが覇道闇軍団だと言ってしまったことに気付き、大いに慌てた。二人は面倒なことにならない為にも、璽武じいに自分たちの素性を明かしていなかったのだ。
「はどうやみぐんだん?」
「わーわーわーわーわーッ!!!」
「鋼殻―――ッ!! 余計な事言うな――!!」
 幻妙と黄金蜘蛛は慌ててごまかそうとしたが、璽武じいに「覇道闇軍団」という言葉は聞こえた後である。明らかに手遅れだ。だが、璽武じいは以外にも落ち着いていた。
「別に、覇道闇軍団だからといってどうと言うところもなかろう。人が死にそうな時細かいことを気にしていたら、助かるもんも助からんからのう。」
「・・・じいさん・・・」
 三人は、璽武じいの素朴な優しさに心を打たれた。
「ところで、“はどうやみぐんだん”とは何かのう? こんな田舎では、世間のことはあまり分からんのでなぁ。」
「知らんのかい。」
 心を打たれた・・・気がしただけだったかもしれない。

 何はともあれ、三人はその日璽武じいの家に泊まらせてもらえる事になった。ただしそのための条件は、家の手伝いをすることであった。
「・・・なんで毒から回復してすぐに、薪割りなんてやってるんだ? 俺。」
「元はと言えば、お前が蟹入道の毒を受けたせいだろうが。責任もって働け。」
「もたもたしている場合じゃないぞ。さっさとこの仕事を終えておかないと、夕食を食わせてもらえんぞ。」
 ブツブツと文句を言っている鋼殻と幻妙に、黄金蜘蛛は言った。
「最初は優しいじいさんかと思ったが、本当は俺たちをこき使うために助けたんじゃないのか?」
 幻妙はぼそりとそう言った。
「それよりもさあ、あのじいさん、しし鍋作るって言ってたよな?」
 鋼殻は素手で薪を割りながら、二人に言った。
「あぁ、言ってたなぁ。どこかでししの肉でも買ってくるんじゃないのか?」
 幻妙は適当に鋼殻の問いに答え、慣れない手つきで斧を振り下ろした。
「・・・ん? まてよ? そんなもの売ってたか?」
 幻妙の返事に、黄金蜘蛛が反応した。
「え? 売ってないのか?」
「・・・そういえば・・・売っていたような覚えはないが・・・」
「じゃあ、どうやってしし鍋なんて作る気なんだ?」
「・・・・・・。」
 三人は素朴な疑問に、思わず手を止め考えた。
「こらー! お前さんたちっ! 薪がないとしし鍋が作れんぞ! キビキビ働かんかいッ!」
 三人が考え込んでいるところに、璽武じいの声がした。
「あぁ、すまんすまん! つい考え事をー・・・・・・・・・?!!??」
 三人は璽武じいの方を見、自分の目を疑った。璽武じいは、自分の体の二倍はあろう巨大な猪を、片手で引きずってきていたのだ。
「いやぁ、今日は大物がとれたぞ! 薪ができたら、早速とれたてのコイツでしし鍋を作ってやるからの!」
 その猪に、銃で撃たれたような跡は認められない。だがその猪は息絶えているかあるいは気を失っているのか、身動き一つしていないのだ。
「・・・とれたてって・・・・・・」
「コイツはなかなか手強かったが、ワシの鉄拳でイチコロじゃよ! ほっほっほっ。」
 このじいさん、超人!!!
 三人の脳裏に、そんな言葉がよぎった。



ししを素手で倒したじいさん、恐るべし!!
ところで三人共、烈帝城へは急がなくていいのか!?

次回、「転機」 ついに十三人衆と対面なるか!?

璽武じい「明日は蟹入道でもとりに行くかのう?」
蟹入道は食べられません・・・。


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