第一話にして隊長らに置き去りにされた、元覇道闇軍団副官三人衆。
はたして彼らは隊長らと再会できるのか?
そしてそれ以前に、彼らは再会するまで生き延びられるのか!?



新SD戦国伝 機動武者大戦 後日談 〜副官たちのその後〜
<第二話 〜受難〜>



「さて、これからどうする・・・?」
 黄金蜘蛛が、鋼殻と幻妙に言った。いつまでも途方に暮れているわけにはいかず、副官三人はこれからすべき事を話し合おうとしているのだ。
「今すぐ突っ走って隊長たちと合流する!!」
 すぐに鋼殻が提案した。だが、それに対し幻妙が異議を唱えた。
「まずはもと来た道で愚羽山を下り、それから烈帝城に向かうべきだな。」
 その意見にまた鋼殻が反対し、またしても言い合いが始まる。
「もと来た道じゃあ追いつけないだろ!?」
「いいんだよ追いつけなくても! どうせ烈帝城にいるのは分かってるんだからな。」
「でも早い方がいいじゃねェか!」
「それで道に迷ったらどうするつもりだ!?」
「何とかなるだろそんなの!!」
 ギャーギャー騒いで話をまとめようとしない鋼殻と幻妙を、黄金蜘蛛は黙って見ていた。いや、もう既に疲れて突っ込む気にもならなかったのだ。
 今まで復讐を兼ねて頑駄無軍団と戦い、一度は落としたこの命・・・しかし不思議と生き返り、今度は自分たちの参加していない会話の中で和解が成立し、挙句の果てに生存に気付いてもらえずに置いていかれる・・・このような事が短時間の間に起これば、疲れるのも無理のないことである。・・・約二名、あまり疲れていないようにも見えるが・・・。
「じゃあ黄金蜘蛛に決めてもらおうじゃねーか!!」
 すると急に、鋼殻らが黄金蜘蛛に話をふる。
「黄金蜘蛛、お前はどう思う!?」
「え・・・?」
 もう既に考えることにも疲れてきていた黄金蜘蛛は返答に困った。が、とりあえずはその疲労感から一つの意見が浮かび上がってきていた。
「・・・今日はもう休んで、明日早朝に烈帝城へ向かおう・・・・・・いろいろありすぎて、お前たちも疲れてないか・・・?」
「いや、全っ然、平気だが俺は。」
 鋼殻の返答に、黄金蜘蛛はますます疲労感をおぼえた。
「ホントに鋼で出来てんのかオメーは・・・。」
 黄金蜘蛛は思わず柄にもない言葉使いで鋼殻に言った。
「とにかく無理は禁物だ、休むぞ!!」
 黄金蜘蛛はそう言い、その場にごろりと寝転がった。そして静かに寝息を立て始める。
「俺は大丈夫なのに・・・」
 鋼殻はなおも言う。
「鋼殻、お前ちっとは黙っとけ。」
 幻妙は黄金蜘蛛に賛成し、近くの岩に体をもたれかけ、眠りについた。
「・・・なんでぇ、俺一人かよ。全く・・・」
 仕方なく鋼殻もその場に寝転がり、空を見た。もう辺りは暗くなっており、天宮の空は雲ひとつなく、美しい星を映していた。
「・・・覇道国にも、こういう綺麗な夜空は戻るのかな・・・?」
 鋼殻はポツリとつぶやく。はじめはあまり寝る気がしないようなことを言っていた鋼殻だったが、数分後には誰よりも早くいびきをかき始めた。

 次の日、三人が目を覚ました頃には、もう頭上に太陽があった。
「うっわ――――――ッ!? 寝すぎたぁ―――――ッ!!!」
 一番先におきた鋼殻が、先日に続き大声をあげた。その声に驚き、またしても昨日と同じように黄金蜘蛛・幻妙が飛び起きる。
「ふ・・・不覚・・・! 今までこんなに遅くまで眠っていた事なんてなかったのに・・・!!」
 黄金蜘蛛がやや悔しそうにそう言う。
「・・・別にいいじゃないか、少しくらい寝坊したって・・・俺は時々こういう時間まで寝ているぞ。」
 幻妙が目をこすりながら黄金蜘蛛に言った。
「・・・それも問題じゃねーか? ・・・あー、それにしても・・・腹減ったなァ。」
 鋼殻が言った。確かに三人とも、昨日の戦いのときからずっと、何も食べていない。鋼殻のその言葉のせいで、三人は一斉に空腹感に襲われた。
「・・・余計なコト言うな・・・。」
「・・・お前が言ったせいで空腹を思い出しちまったじゃねェか・・・。」
 黄金蜘蛛と幻妙が鋼殻に文句を言った。
「んな事言ったって、減ったもんは減っちまったんだからごまかしようがねェだろー!?」
「・・・仕方がない・・・まずは愚羽山をくだって、川で魚でも探そう・・・。」
 黄金蜘蛛が他二人に提案した。
「えー? わざわざ魚を探すのか〜? 民家とかから奪えばいいじゃんよー。」
 鋼殻がそう黄金蜘蛛に異議を唱えた。
「バカを言うな。昨日の頭目たちと大将軍との会話を忘れたか? あれを聞く限り、頭目たちと大将軍は和解をしたんだ。それなのに我々が悪事を働いたらマズイとは思わないか?」
 黄金蜘蛛が鋼殻に注意をした。
「・・・まあ、それもそう・・・・・・なのか?」
「やっぱりお前何も言うな!!」
 鋼殻は両側から二人に突っ込まれた。
「とにかく、急いで山を下るぞ!」
 黄金蜘蛛はそう言い、先に愚羽山をくだり始めた。幻妙と鋼殻もそれに続く。
 このとき三人は、この先遭遇する災難のことを知るよしもなく、また、全く予想もしなかった。

 三人は愚羽山のふもとに到着し、近くを流れる川で魚をとり始めた。
「いくぜ、裂斬波【れつざんぱ】!!」
 鋼殻の拳から三日月状の光の刃が繰り出され、水中に放たれた。
「くらえ、念力・催眠波【すいみんは】!!」
 水中を集中してみていた幻妙の目が怪しく輝き、不思議な波動が放たれた。
「・・・っあ、くっそー! ンのヤロー・・・」
「・・・やはり魚には効かんのか!?」
 どうも魚には当たらなかったらしく、ぶつぶつ言いながら拳を握り締める鋼殻。幻妙の方も効果がないらしくかなり悔しそうである。その横では黄金蜘蛛がその辺の木の棒などを使って作った釣りざおらしき物を持ち、釣り糸代わりに用意したらしい、細い植物のつるを垂らしていた。
「・・・お前ら、技に頼らないで、もう少し地道にやったらどうだ・・・?」
 二人の様子を横目で見ていた黄金蜘蛛が言った。確かに、二人のやっていることは水中を泳ぐ魚には効果のないことである。
「えー、でもよー、地道にやってたら空腹で倒れそうじゃないか〜?」
「俺もそう思う。地道にやれば引っかかるってもんでもないし・・・」
 幻妙と鋼殻は空腹のあまり、魚がかかるまでの時間が耐えられないようである。
「だがお前たちも、当たらない技をいくつも繰り出せば、それこそ腹が減るんじゃないのか?」
「そういう事は魚の一匹や二匹引っかかってから言えよ黄金蜘蛛ー。」
「お前らもな。」
 その会話を最後に、三人は黙り込み、再び各々の方法で魚を取り始めた。・・・取れるはずもないのだが。

 三人の会話が途絶えてから約一時間後―――未だに魚は捕まらず、三人の体力と気力ももはや限界に達しようとしていた。
「・・・腹減った〜・・・死ぬ〜・・・」
「・・・黙れ鋼殻・・・体力の無駄だ・・・」
「・・・魚、つかまらね〜な・・・」
 三人はお互いの言葉を聞いているのかも分からないがとりあえず色々と言いながら魚が来るのを待っていた。しかし、先程から魚の影さえ見えない。
「魚、いなくなっちまったのかな・・・」
「結局、三人で水の中荒らしまくったからな・・・」
「飯ィ・・・」
 副官三人にとうとう諦めの気持ちが出始めたちょうどその時、急に背後からガサガサと物音がした。三人はその音を聞いた途端反射的にそちらを向き、武器を構える。物音の主はしばらく、ガサガサと近くのやぶの中を動いていたが、少しすると物音がやみ、動かなくなった。
「・・・何だ・・・?」
「殺気を感じるな・・・」
「・・・敵か・・・?」
 三人は小声でそんなことを言い合う。そして次の瞬間、ガサッ!! と大きな音をたて、かなりの巨体を持つ何者かが飛び出した。それは槍のように鋭い牙を持った、巨大な猪だった。
「!!」
 三人はその強敵を目の前にし驚きの表情を見せた、が・・・
「くらうがいい、念力・催眠波!!」
「ゆくぞ、鋭爪の舞【えいそうのまい】!!」
「とどめだっ、熱血火炎放射ァ!!」
 三人は何を言った訳でもないが一斉に猪に飛びかかり、各々の必殺技を放った。しかも幻妙の「念力・催眠波」で眠らせ動きを封じた後、黄金蜘蛛の「鋭爪の舞」でズタズタに斬り刻み、鋼殻の「熱血火炎放射」で火あぶりにし、見事な連係プレーで哀れ巨大猪はあっという間に焼肉状態にされてしまった。
「・・・よっしゃ、朝飯調達完了♪」
「いや、時間的にはもう昼時じゃあないのか?」
「どちらにしろ、これなら晩飯もどうにかなりそうだな。」
 三人は、とても満足そうにそう言った。そして、先程の猪焼きを食べ始める。
「よし、腹ごしらえをしたら、まずは近くの町か村を目安にして行こう。下手な所で野宿もしたくはないしな。」
 猪を食べながら、黄金蜘蛛が提案した。幻妙と鋼殻は、猪の肉にかみつきながらうなずく。そしてその後は、三人とも満腹になるまで無言で食事を続けたのだった。

 腹ごしらえを済ませた三人は、とりあえずは愚羽山に比較的近い『自武羅流樽の町【ジブラルタルのまち】』を目指すことにした。・・・しかし、昼食にありつくまでにかなりの時間を浪費していたため、日がすっかり暮れてしまった頃、彼らはまだ町とは程遠い森の中にいた。
「・・・黄金蜘蛛〜・・・こんな森の闇の中じゃあ何にも見えやしねぇぜー・・・。」
 歩き疲れてきた鋼殻がそう言った。
「・・・こんな調子で本当に自武羅流樽の町に到着するのか・・・?」
 鋼殻に続き幻妙も口を開いた。
「情けないぞ、お前ら! 文句を言う元気があったら歩くんだ。」
 疲れを隠しつつ、黄金蜘蛛が答えた。
「へ〜い・・・」
 鋼殻と幻妙は黄金蜘蛛にそう言われ、仕方なくまた歩き始めた。
 しかしそれから数十分後、鋼殻・幻妙だけでなく黄金蜘蛛もついにネをあげた。
「・・・駄目だ! こんな調子じゃあ朝にならないと町には到着できない!!」
「つーかさ、かえって道に迷って明日の朝きつくなるだけだよな。」
「・・・じゃ、野宿か?」
「・・・しかないよなー・・・。」
「賛成〜・・・。」
 三人とも意見が一致し、近くの木に背をもたれかけた。・・・眠りやすいように鎧を外し、武器を近くに置いて。

 三人は、朝―――とは言ってもだいぶ日が高く昇った頃、目を覚ました。
「ふあ〜〜・・・・・・だいぶ寝ちまったみてーだなー・・・。」
 鋼殻が眠そうにあくびをしながら起き上がりそう言った。 
「・・・まったくだ。」
 黄金蜘蛛も、伸びをしながら言う。
「蘇生されてから、寝坊ばかりだな本当に・・・。」
 幻妙は目をこすり、まぶしそうに太陽の位置を確認しながら言った。
 三人は顔を見合わせ、そろそろ行こうと言うかのようにうなずいた。と、その時、三人は周囲に何者かの気配を感じ、警戒態勢をとった。
「・・・お前らも気づいたか?」
 黄金蜘蛛が周囲に目をやりながら小声でそう言った。
「・・・あぁ。」
「・・・少なく見積もっても五、六人はくだらないな・・・。」
 幻妙と鋼殻も小声でそれに答える。三人は背後を取られぬように背を合わせて輪を作り、周りの様子に目を光らせた。
「・・・何者だ! 隠れていないで出て来い!!」
 黄金蜘蛛がそう言うと、案外素直に人影がいくつか現れた。それらは見た目からして恐らくは“闇軍団”の落ち武者で、鋼殻の予想通り人数は6人・・・彼らがよほどの腕前の持ち主でなければ、普通に戦って勝てない人数ではなかった。
「おいお前ら、大人しく金目の物を出せば、すぐにここを通してやるぜ?」
 敵の一人が三人の方を見、笑いながらそう言った。
「・・・笑わせてくれるな。見たところお前らは落ち武者か何かのようだが、貴様らごときが我ら、元覇道闇軍団の副官に勝てると思っているのか?」
 黄金蜘蛛はそう言い返した。
「俺らは勝てる自信ならあるぜ? お前らこそ、そんなことを言って俺らをびびらせようって作戦なんじゃないのか?」
 さっきとは別の者が黄金蜘蛛らを挑発するような口調でそう言った。
「へェー、じゃあその自信をなくしてやろうか?」
「我らの力、見せてくれる!」
 鋼殻と幻妙も負けじとそう言い返し、三人は武器を取ろうと背中や足元に手を伸ばす―――が、三人は手を伸ばしたその直後に硬直した。
 ・・・・・・武器が、無い!?!?



何故副官三人衆の武器がないのか、何故彼らは寝坊ばかりなのか(ぇ)。
この後彼らはどう敵と戦う?

次回、「苦労」 こうご期待・・・

幻妙「・・・なぁ、『苦労』って・・・そんな直接的すぎる題名もないだろうよ・・・」
幻妙さん、ツッコミ禁止です。


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