新SD戦国伝 機動武者大戦 後日談 〜副官たちのその後〜
<第一話 〜和解〜>



 「機動武者大戦」
 ―――それは天宮の歴史上語られることのない戦い・・・
 異次元の武人たちとの、世界をかけた戦いであった。
 長年の光と闇の戦い。
 頑駄無軍団やその仲間の者は自らの正義を信じて戦い、勝ち続けた。
 だが、その光により、異次元の国・覇道国は死の国と化したのである。
 自国を救うために、偶然できた時空の裂け目から天宮へとやってきた覇道国の者達・・・
 彼らは闇軍団の残党を集め催眠術をかけ、「覇道闇軍団」を結成、天宮に闇を注ぎ、光闇のバランスを取り戻そうと試みたのだ。
 頑駄無軍団と覇道闇軍団の互いの世界を賭けた戦いは、そこから始まった。

 覇道国の者は頑駄無軍団の説得にも応じず、自国を失いかける怒りと悲しみに駆られ戦い続けた。
 そしてついに愚羽山中腹で、機動武者「轟天號改【ごうてんごうかい】」と「邪神大帝【じゃしんたいてい】」は互いの攻撃により大破し、覇道闇軍団の足軽・下忍らは全滅
 ―――最終決戦は間近となった。


 覇道闇軍団の三人の副官も、愚羽山【グワンさん】中腹で力尽きた。その肉体はその場に残され、十三人衆は最終決戦のために山頂へと撤退した。
 我々三人はもう終わり――そう思って、静かに「死」に身をゆだねようとしたその時、三人の体を温かい光が包み込んだ。光は副官達の傷ついた体を撫でるように取り巻く。そして次の瞬間、今まで力無く横たわっていた武闘部隊副官・鋼殻【コウカク】が急に起き上がり叫んだ。
「うわ――ッ!? 寝過ごしちまったァ―――!!!」
 その声に驚き、同じく倒れていた特殊部隊副官・黄金蜘蛛【コガネグモ】と、妖魔隊副官・幻妙【げんみょう】も跳ね起きた。
「し、しまった! 寝過ご・・・え?」
 隊長に怒られる、とか大騒ぎしている鋼殻は置いといて、何かに気付いた二人は自分の体を触りながら顔を見合わせる。
「・・・傷が、治って・・・」
「・・・生き返った・・・!?」
 その鎧や衣は破損しているものの、体には先ほどまでの戦いの傷は微塵も残っていない。手足は思うように動く。意識もそれなりにはっきりしていた。
「大変だ二人共―――ッ!!!」
「うわ!?」
 鋼殻が急に二人の間に割り込んできた。
「どうすっか!? 隊長たちに置いてかれちまったぞ!! ぼんやり向かい合ってる場合じゃねェ!!!」
 先ほどまで何をやっていたかさえ忘れたようで、完全にパニック状態に陥っている鋼殻は、幻妙の胸ぐらをつかみゆさゆさと揺らした。
「お、おいやめろ!!」
 幻妙が慌てて鋼殻の手を振り払おうとする。が、妖魔隊副官として念力を得意としていた幻妙では、武闘隊副官としてかなりの腕力のある鋼殻を振り払えるはずもなく、ガクガクと揺すられている。
「あーわーわー!! こ・・・こーがーねーぐーも〜〜〜〜〜!!」
 本気で助けを求める幻妙。もうこのままでは目が回って吐きそうだ、という表情である。しかしそれにすら気付かず揺すり続ける鋼殻。とりあえず黄金蜘蛛は二人の間に割って入り、鋼殻の手を幻妙から離させた。
「鋼殻ッ、少しは落ち着け!」
 黄金蜘蛛は鋼殻の肩をガシッとつかみ、顔を自分の方に向けさせ、真剣にこう問う。
「お前、自分の状態が今どうなっているのか分かるか?」
「へ?」
 鋼殻は黄金蜘蛛に問われ、今までの事を思い出してみた。
 ボロボロになっている自分と幻妙、黄金蜘蛛の衣や鎧、にもかかわらずその体に傷は無い。ふと上を見上げるとそこには大破した邪神大帝があり、目線を下に下ろすとあちらこちらに力尽きた足軽や妖怪が横たわっている。そんな中、何故か自分たち三人だけが立っていた。
 辺りをぐるりを見渡し終わって、鋼殻ははっとする。
「わ―――――!? お・・・おおおお俺ッ! 俺たち生き返ってる――――!?」
 先ほどにも増して大騒ぎをし、走り回る鋼殻。
「ヤレヤレ・・・」
 黄金蜘蛛が呆れ顔で溜め息をつく。
「いちいち騒がないと気が済まないのか!?」
 かなり鬱陶しそうな表情で、幻妙が文句を言う。
 と、鋼殻が再び幻妙と黄金蜘蛛の方に戻ってきた。その顔は何故か青ざめ、新たな何かに気付いたようだった。
「ど・・・どどどどうしようか二人共!? 俺たち、死霊武者になっちまったのか!?」
「死霊武者!?」
 死霊武者とは読んで字の如く、死霊の武者――つまりは亡者であり、一言で言えばゾンビだ。当然そんなモノに自分がなったと思うと気味が悪いが、彼らの体はそんなおぞましい様子はなく、死ぬ前と全く同じ状態だった。
「・・・鋼殻、俺たちは死霊武者じゃなくて、完全な形で蘇生されたのだと思うぞ・・・。」
 妙な発想をした鋼殻に驚き呆れながら、黄金蜘蛛がツッ込む。
「え・・・あ、そうなの?」
 言われてみてようやく事態が把握できたようである。
「・・・・・・はあぁ・・・・・・」
 ようやく三人全員が落ち着き、思わず同時に溜め息をついた。

 少しの間、沈黙が続く。と、ふと幻妙が手をポンとついた。
「・・・・・・・・・あ!」
「どうした?」
 黄金蜘蛛と鋼殻はそれに反応し、幻妙の方を向く。幻妙の表情は少し強張り、そしてぎこちなく二人の方を向く。
「さっき鋼殻が『隊長に置いていかれた』って、言ってたよなァ・・・?」
「あぁ、確か・・・に・・・・・・・・・!!」
 うなずきかけた瞬間、二人ははっとする。
「たッ・・・隊長たちや頑駄無軍団どもは―――!?」
 そう、その場に立っているのは副官の三人だけで、倒れているのも足軽や妖怪だけ―――隊長である十三人衆と、頑駄無軍団の者達は誰一人としてそこにはいないのである。
 三人は慌てて辺りを見回す。だがそれでも、やはりその場には自分たちだけで、他の者の姿は影も形も無い。
「まさか・・・やっぱり・・・!?」
 黄金蜘蛛が愚羽山の山頂の方を見上げる。その様子を見、他二人も山頂へと目を向けた。
 三人とも少し静かにしてみると、微かにだが、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「・・・何故、我らを助ける? 生かしておけば、いつ裏切るやも知れんぞ。」
 その声はまさしく、覇道闇軍団の頭目であるとともに十三人衆特殊部隊の隊長である、黒蝙蝠【くろへんぷく】の声だった。
「た・・・隊長・・・!?」
 副官を務めていた黄金蜘蛛は、その声に即座に反応する。どうやら黒蝙蝠達は、誰かと会話しているようである。だがその話し方は今までに比べると静かで、気をつけないとこの位置からではすぐに聞こえなくなりそうな声だった。
「義理人情で助けるのではない。お主らは生きねばならないのだ。」
 黒蝙蝠の声に続き、天宮を治める、飛駆鳥【ビクトリー】大将軍の声が聞こえてくる。その話の内容を聞く限り、どうやら黒蝙蝠が話しているのは飛駆鳥大将軍のようだった。
「何で、頭目が大将軍なんかと会話を・・・!?」
 幻妙は驚きを隠せず、ア然とした。
「信じらんねェ・・・。」
 鋼殻も同様に、ぽかんと山頂の方を見ていた。
「・・・助ける・・・?」
 ただ黄金蜘蛛だけは、飛駆鳥の言ったことが気にかかり、静かに山頂での会話を聞き続けた。
 当然山頂にいる彼らが中腹の方の副官たちのことに気付くはずもなく、そちらの会話は続いていた。
「苦しくとも生き抜いて、成さねばならぬことがある。」
 大将軍が、先ほどの台詞に言葉を続ける。
「なさねばならぬこと・・・?」
 炎魔隊隊長・紅蛇蝎【ベニダカツ】が聞き返す。
「そう、覇道国を救うことは、お主らと我々が協力して初めてなしえるのだ。」
「ですが、どうやって? 時空の裂け目は閉じてしまったのに・・・。」
 大将軍に、武装部隊女隊長・艶麗【エンレイ】が尋ねた。
 と、ここで副官三人は今の言葉に反応し、驚いた。
『時空の裂け目は閉じてしまった』
 三人はその言葉を聞いてすぐに、覇道国と天宮を繋いでいた時空の裂け目のある、俄雲乱土の方角を向く。そこには、一度死ぬ前までは確かに時空の裂け目はあった。だが、今は艶麗の言った通り、時空の裂け目は閉じてしまったようで、空には何も無かった。
「な・・・何で・・・!?」
 鋼殻はショックで硬直し、幻妙はただ呆然と俄雲乱土の西の空を見上げていた。
「黄金蜘蛛・・・アレは一体、何で・・・?」
 今にも消えそうな意識を何とか保ちながら、空を見上げたまま幻妙が尋ねる。当然黄金蜘蛛もその状態にあ然としてはいたが、今までの出来事を思い出し、こう結論付けた。
「恐らく、先ほどの邪神大帝と轟天號の爆発の影響で、あの時空の裂け目は閉じてしまったのだろう。元々、偶然時空が裂けたのだからな・・・」
 時空の裂け目が消えたと言うことは、当然覇道国と天宮は再び、次元的に完全に分離したと言う事。つまり、彼らは国へ帰る手段を失ったということである。三人ともそのショックは大きいようだった。

 三人が呆然と立ち尽くしている時、大将軍と黒蝙蝠の対話は続いていた。
「・・・時空の裂け目・・・・・時空・・・・・・・・・・あ!」
 今回、偶然時空の裂ける所を見ていた為にこの件に首を突っ込んできた若武者・飛燕【ヒエン】頑駄無がふと何か考えながら口を開いた。そして、何かに気付いたようであった。
「・・・父上が開発中だった、『均衡制御装置』を使えば、あるいはひょっとして・・・」
 この飛燕の父・鉄心【テッシン】頑駄無は、覇道国の事情を誰よりも早く知り、その責任感から罪滅ぼしとして光と闇の力を制御・調整するための装置を開発しようとしていた。その装置が、今飛燕の言った『均衡制御装置』である。
 だが、飛燕は哀しげに言葉を繋げる。
「しかし・・・父上は・・・」
 飛燕の父・鉄心はもうこの世にはいない。
 鉄心は飛燕が覇道国の者達と戦っている事実を知り、覇道国の者の為にも、飛燕自信の為にも、戦うのをやめさせようと試みた。息子の飛燕が覇道国の者と戦い、装置完成を中断する結果となるのを防ぐため、悪無覇域夢山【アナハイムさん】での戦闘に、鉄心はあえて黒蝙蝠の影武者となり、息子の前に姿を現したのだ。
 鉄心は飛燕と直接話をし、飛燕たちに戦うのをやめるように説得を試みたのだが、二人の話の最中、今回の件を平和的に解決しようなどとは微塵も思っていなかった黒蝙蝠が、鉄心の胸に刀を突き刺したのだ。
 目に涙を浮かべる飛燕に、飛駆鳥はそっと近寄った。
「飛燕よ、あれをよく見よ。」
 そう言って飛駆鳥は、今は何も無い方を指差した。
 飛燕と共に皆が振り向くと、そこには少しずつ、小さな光が集まり始めていた。光は次第に大きくなり、人一人が隠れそうな大きさになる。そして、まばゆい閃光が放たれて光の玉は消える・・・・・・そこに残されていたのは紛れも無く、飛燕の父・鉄心であった。
「ち、父上――っ!!」
 飛燕は思わずそう叫び、鉄心の方へと走っていった。
「・・・飛燕!? 飛燕か!? 私は生き返ったのか!?」
 鉄心も飛燕に気付き、それと共に自分に再び命のともし火が灯った事に気付いた。
「アニキ〜! よかったでやんすねぇ。グッスンでやんすよ!!」
 飛燕と共に旅をして来た花火師の一人・頑巨砲【ガンキャノン】が涙を流しながら二人の再開を喜んだ。
「アニキ〜、感激でゲス! うるうるうるうるっ。よかったでゲスねぇ!」
 もう一人の花火師・頑戦車【ガンタンク】も潤んだ目で二人を見つめる。
「ありがとうよ二人とも。」
 飛燕は頑巨砲と頑戦車の方を向き、満面の笑みで二人に答えた。
「ところで父上」
 そしてふと真剣な表情になり、飛燕は再び鉄心の方を向く。
「早速ですが、願い事がありまして・・・」
 そう言って黒蝙蝠ら覇道国の十三人衆の方をちらりと見た。鉄心もそちらの方を向き、うなずいた。
「『均衡制御装置』の件であろう?」
 鉄心には、黒蝙蝠の表情から、話が和解方面へと向いていることがすぐに分かった。
「大将軍殿はいかように・・・?」
「私からも頼みたい。」
 鉄心が大将軍の意見を仰ぐと、飛駆鳥もすぐにそう答えた。
「御意に。では早速、作業を再開致します。」
 そう言って鉄心が立ち上がる、と、先ほどまで沈黙していた黒蝙蝠が口を開いた。
「よいのか・・・鉄心。俺は協力してもらっていたお前を裏切ったのだぞ!?」
 黒蝙蝠の表情は真剣だった。今生き返ったとはいえ、自分が鉄心を殺したのは事実。許されるはずが無いと思っていたのだ。だが鉄心は笑顔でこう答えた。
「お主らと初めて会った時、言ったはずだぞ。協力は惜しまないとな。」
「・・・」
 黒蝙蝠も他の十三人衆も、再び沈黙した。その表情は、後悔と、謝罪と、感謝の気持ちが複雑に絡み、強張っているようだった。
「鉄心殿、カラクリに関しては俺にまかせてくれ!」
 カラクリ好きな超将軍・爆流【バクリュウ】が鉄心の方を向いて言った。
「我々も協力しましょう! 共に覇道国を救うんだ!」
 飛燕も、そう言って他の超将軍や副将軍、その他大勢の仲間の方を向いた。
 全員がうなずいているようだったが、ただ一人、カラクリの苦手な超将軍・獣王【ジュウオウ】だけは「え、それはちょっと・・・」とでも言いたそうな表情をしている。
「協力はありがたいが、足を引っ張るなよ! はははははっ!!」
 爆流が、明らかに獣王の方を向いて言った。それを見、全員が大爆笑をした。
 みんなの笑い声が響く中、黒蝙蝠が静かに口を開いた。
「・・・・・すまなかった。我々のことを自分のことのように考えてくれるとは・・・」
 それ以上は何も言わなかったが、黒蝙蝠のその目から、ひとしずくの涙が流れおちた。
 そんな黒蝙蝠を見て、飛駆鳥は十三人衆を見回しながらこう言った。
「過ちは誰にでもある。もちろん、我々にもだ。この天宮の国で過去に起こった、光と闇の戦いがそのいい例だ。お主たちの世界に、多大な迷惑をかけた我々も十分に反省しなければならない。どの世界に住んでいようと たとえ光と闇であろうとも 共存できるはずなのだ! いずれ『均衡制御装置』も完成し、お主たちも故郷へ戻れることだろう。それまでは覇道国の民よ。共に歩んで行こう! 正義の道を!! 正義こそ、未来を示し、希望の道を切り開く、光の力なのだから・・・!!」

「・・・大将軍・・・・・・いいコト言うなァ・・・・・・」
 鋼殻がつぶやく。黄金蜘蛛と幻妙も、大将軍の言葉に胸を打たれていた。
「我々も、もっと早く、あいつらの言葉に耳を傾けて置けば良かったのかもな・・・。」
 そうすれば、もっと早く事を解決できたのかも知れない・・・黄金蜘蛛はそう感じていた。
「・・・あれが本音ならな・・・・・・・・・おぶっ!?」
 胸を打たれてはいるものの、何となく信用していない、というような表情で幻妙が言う、が、言い終わった途端に鋼殻の殻殴りが炸裂した。顔面に直撃を食らった幻妙は一気に三メートルほど吹っ飛んだ。
「なっ・・・何をするッ!?」
 吹っ飛んだ幻妙はふらふらと立ち上がり、鋼殻の方をにらみつける。それに対し、鋼殻の方も負けじとにらみ返した。
「てめえッ、せっかく大将軍があそこまで言ってンのに、何で信用しねェんだよ!!」
「あれが本音かどうかなんて分からないじゃないかッ!! もしかしたら、ああ言って油断した隙に、総攻撃をかけて再びあの世へ送る気かも知れないんだぞ!?」
「あンだとキサマぁ!!」
 大将軍らを完全に信用した鋼殻と、まだ完全には信用していない幻妙の意見が衝突した。にらみ合いから、二人は戦闘体制を取る。
「前々っから、俺とお前が同じ副官だって事には疑問持ってたんだこの自己中野郎!!」
「俺とて、キサマみたいな熱血豪快負けず嫌い野郎が副官だって事には納得してないンだよ!!」
「何だとこの野郎ッ!?」
「やるかぁッ!?」
「よせ馬鹿者! うるさくて上の会話が聞こえないじゃないか。」
 今にも戦闘開始しそうな二人の会話(言い合い)に、黄金蜘蛛が水をさす。まだ山頂の方では大将軍らとの会話が続いていて、黄金蜘蛛はその話の展開を聞いていたのだ。
「あいつらが言っていることが本気かどうかは確かに分からないが、そういう事の判断をするのは隊長方ではないか。我々がとやかく言うものじゃない。」
 そう言い終わると、黄金蜘蛛は再び上の話に聞き耳を立てる。鋼殻と幻妙は、今の言葉ですっかり黙り込んでしまった。そして大人しく、自分たちも上の会話を聞く・・・いや、聞こうとした。
「じゃあ、とりあえず烈帝城【れっていじょう】の方で、これからどうするかを話し合おう。」
 大将軍の提案で、全員が愚羽山を下ろうとし、こちらへとむかい始めた。
「お、これで隊長たちと合流できそうじゃん!」
 鋼殻がそう言う。
「確かに。」
 幻妙と黄金蜘蛛もそう思った。が、
「あ、大将軍、烈帝城に行くんだったら、そっちから降りるよりもこっちの道から降りた方がいいンじゃないのか? ホラ・・・」
 武闘隊隊長・隼天狗【ハヤブサてんぐ】が飛駆鳥に言った。その示された方向は、明らかに黄金蜘蛛ら三人のいるところとは反対方向である。それでは合流できないと思い、三人は慌てた。
「確かにそうだな。」
「じゃあ、こちらから行きましょう!」
 山道がどう続いているのかを確認し、隼天狗の示した方向から行くことに決定したようである。
「ええぇッ!? そんな、隊長――――ッ!!」
 思わず鋼殻が上に向かって大声で叫ぶ。
「・・・ん?」
 皆が山を下ろうと動き始めたが、影の忍者軍団頭領・武零斗【ブレード】はその声に気付いたのか、鋼殻らのいる方を振り返った。
「あ、気付いた!?」
 幻妙が言う。しかし・・・
「お頭、何か・・・?」
 武零斗忍軍のくノ一・彗仙【スイセン】が武零斗の様子に気付き、声をかけた。
「・・・いや、なんでもない。さあ、行くとしよう。」
 ただの空耳だと思ったらしく、武零斗は再び振り返り、飛駆鳥らの後を追った。

 もはや完全に置いていかれたこの三人。慌てて山頂へ登り一行の行った方向を見るが、もう下ってしまった後らしく、その姿は無かった。鋼殻はへなへなと座り込み、幻妙はがっくりと膝をつき、黄金蜘蛛はその場に立ったまま。取り残された副官たちは途方に暮れるしかなかった。



いきなり隊長たちに置いて行かれてしまった副官三人衆。
はたして彼らはこの後何をすればいいのか?

次回、「受難」 お楽しみに・・・

鋼殻「俺らは楽しくねェぞオイ!!! ヒトゴトだと思いやがってこの・・・」
以下強制終了


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