2009年クリスマス |
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奇数の年はサンタの絵! といつの間にかそうなってたので、魔殺駆、鳳凰、天地に続き第四弾。新生闇軍団の軍団長達です。…。ど う し て こ う な っ た なにはともあれ(!?)、オマケ小説つきです。 2009/12/08 |
〜師走の末に〜
時は年末、師走のある日。破悪民我夢【バーミンガム】の街に降り積もった雪が、月の光を受け人々の心と共に輝いている。冷えた空気は全てを研ぎ澄まし、静寂の中に人々の温かく白い息だけを浮かび上がらせる。 だがそれらすべてを切り裂きながら、何者かが街へ向かって飛び込んできた。 「メッリイィィクリッスマアァァァァスッ!!!!!」 赤い何かがそう叫びながら、一直線に雪の中を突っ切ってきた。それが引くそりに乗った同じく赤い男女が、歓声をあげる。それを追って飛ぶやはり赤い身なりの男が、街を歩く人々に向かって色とりどりの箱を投げつけていく。 「オラァガキども、受け取りやがれィ!」 「きゃあぁぁぁ!?」 道端の少女の頭にその箱が命中する。しかしそんな事など一切気に留めず、赤い集団はその場を走り去る。近くにいた何名かが、かき分けられた雪をかぶり次々と埋まっていった。 赤く立派な鎧を身にまとった男が、破悪民我夢の街を歩いていた。全てが吸い込まれるような感覚に襲われながら、無意識のうちに外套を手繰り寄せる。 「ふむ…さすがに冷えるな…」 そうつぶやくと、声が白い煙に変わった。 直後。 ズドドドドドド! というけたたましい音と共に、人々の悲鳴が近寄ってきた。突然のことに、男はバッと振り返り、腰の刀に手を当てた。雪を煙のように巻き上げながら走るそれが目の前に来た時、男は一瞬言葉を失った。 「ハッハァー新生闇軍団【しんせいやみぐんだん】だァー!!」 そう言いながら、箱をばらまく赤い暴走集団が通り過ぎて行った。そしてしばらく呆然としていると、それらがのそのそと引き返してくる。 「魔殺駆【マザク】様ではありませんか!」 そりに乗っていた男が降りてきて、立ち尽くす男――魔殺駆に近寄った。その口元に蓄えられた立派なひげを見て魔殺駆は自分の記憶を疑う。 「…漸羅【ゼラ】、だよなァ? 炎魔忍軍の…」 「はい。」 「あと羽流鋭【バルス】…ってそんな綿ついてたか?」 「付けました。」 話を振られて、飛んでいた男――羽流鋭が答える。 「刃流刃浪【ヴァルヴァロ】…はただの妖怪形態か。」 「いえ、角付けました。」 「は?」 そりを引いていたもの――刃流刃浪は、通常形態に戻りながら答えた。その姿を見てみると、確かに複雑な形をした枝のようなものが頭に付いている。 「で……華紅羅【ガーベラ】、何だその格好は。」 「いやですわ魔殺駆様。サンタガールですよ、サ・ン・タ・ガ・ー・ル♪」 「……あ、そういうことか……」 華紅羅の返答を聞き、魔殺駆はようやく合点がいった。 「クリスマスのまねごとか。」 「はい。」 四人が口をそろえた。 「…漸羅がサンタで、刃流刃浪がトナカイか…」 「さすが魔殺駆様、ご名答です。」 「嬉しくねェよ。」 刃流刃浪の発言を魔殺駆は適当にあしらう。 「羽流鋭、お前もサンタのつもりか?」 「はい。はじめは空飛ぶトナカイで用意していたのですが…」 「刃流刃浪と息が合わずにうまく進めなかったのよね。」 「で、ひげが間に合わないのでこのように。」 「…ふーん…」 聞いておいて、魔殺駆はどうでも良さそうだ。 「んで俺が一番気になるのが華紅羅、お前なんだが。」 「だからサンタガールですって。どうですか?」 「いや…どーでもいいよ。そもそもサンタは男だろ。」 今まで嬉しそうだった華紅羅の動きが、ピシッ、と凍りついた。 「お前ら、サンタなんてジジィのマネごとして何が楽しいんだ? ただでモノもばらまいて、割に合わんだろうに。」 「いや、それはクリスマスですし…」 「キィ―――――――ッ!!」 急に華紅羅が大声をあげた。そして、かぶっていたサンタ帽を雪の上に叩きつける。 「やってられないわよこんなこと!! もう頭来た、クリスマスだからって見逃してたけど、さっき見つけたアベック氷漬けにして砕いてきてやる!!」 「ちょ、待て華紅羅!!」 漸羅たちの制止も聞かず、華紅羅は一人駆けだした。 「あーほら、華紅羅キレちまったじゃねェか。」 「魔殺駆様がどーでもいいとか言うからですよ!!」 そう吐き捨ててから、漸羅・羽流鋭・刃流刃浪が華紅羅を追って行った。 「あ…あいつら、軍団長に向かってなんて口を…」 「あ、そうだ魔殺駆様!」 羽流鋭が一人戻ってきた。 「今回の服とプレゼントの代金、新生闇軍団の経費で落としますので。」 「は!? 何故!?」 「今回のコレ、天の声なんで。」 「天? 天界に脅されたとでも言う気か?」 「いえ、闇帝王【やみていおう】様です。ほら、あの上空にある黒い雲。」 「闇帝王様から!? マジで!?」 「てなわけでコレ領収書です、よろしくお願いします。」 「マジかよ……高ッ!? オイこれっ…」 領収書のケタを見て慌てた魔殺駆が顔をあげると、すでに羽流鋭は飛び去っていた。 …おしまい。
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