キリ番999・武駄丸さん 「SD戦国伝の小説」


武者○伝 場外戦闘(?)
〜岡山県 剣聖頑駄無〜



岡山県にある某小学校。
そこに剣聖頑駄無はいた。
武者の世界から天馬の国――日本へと飛ばされた彼は、この小学校の非常勤講師として働いているのだ。
だが最近、彼を困らせるような事が起きていた。

「きりーつ! れーい!」
「せんせ〜い、おはようございまーす!」
 子供たちの元気な挨拶…剣聖頑駄無の学校での一日は、こうして始まるのだ。いつもなら笑顔で返事をするところだが、今日の彼の表情は晴れていなかった。
「…おはよう。じゃあ早速、授業を始めるとするぞ…。」
 剣聖はそう言って教科書を取った。そして、ちらりと教室の後ろの方を見る。そこには、剣聖とは別の、武者世界の住人がちょこんと座っていた。別にそこに自分とは別の者がいても、授業の邪魔をしないなら良いかもしれないが、このときばかりは事情が違っていた。
 そこにいるのは堕悪座駆例路【ダークザクレロ】。彼は堕悪武者…つまりは剣聖たちの敵の一人である。そんな奴が、大人しく教室内にいるのだ。

 彼が来たのはちょうど三日前。ちょうど給食が終わった昼休みの事だった。剣聖が子供たちとドッジボールをやっていると、急に空から降ってきた物があった。それこそ、この堕悪座駆例路である。最初剣聖は、急な堕悪武者の到来に思わず武器を構えた。そしていざ戦おうと思ったそのとき、思わぬ事態が起こった。
「わー、かわいー!」
 女の子の一人がそんな事を言い、堕悪座駆例路に近寄ったのだ。剣聖は慌てて、危ないから離れるよう指示をしたのだが、子供たちはそんな事お構いなし。最初の女の子に続き、どんどん堕悪座駆例路の周りに集まってきた。剣聖は、最初敵が暴れ出さないかとハラハラし、武器を構えたままでいた。しかし、そんな事はお構いなし、といった感じで子供たちは堕悪座駆例路に話し掛ける。
「ねー、どこから来たのー?」
「何しに来たのー?」
「一緒にあそぼー!」
「!!!」
 剣聖は、今の発言を聞き慌てた。もしも遊んでいる最中に攻撃でも始めてしまったら…そんな心配で頭の中がいっぱいになる。
「皆! そいつは堕悪武者といって敵」
「さ、行こー!」
 剣聖が子供たちを説得しようとした瞬間、堕悪座駆例路と子供たちは鬼ごっこを始めてしまった。そして剣聖はその場に忘れさらえる。
 剣聖は、少し切なさを感じた。

 それから今日までの間、まだ堕悪座駆例路は攻撃を仕掛ける様子はない。しかし、いつされるかも分からないので、剣聖としては早めに倒してしまいたいところであった。しかし、肝心の堕悪座駆例路と子供たちがとても仲良くなってしまい、倒すに倒せなくなっているのだ。仕方なく剣聖は、普段は自分のいるこの教室にいる事を条件に、堕悪座駆例路の滞在を許可した。
 当然、この事は校長・教頭や他の職員に相談されたが、人間たちはまだ堕悪武者の脅威を対して知らないせいか、あまり事態を深刻に考えてはくれなかった。

 その日の昼休み、剣聖は、子供たちのいない教室に一人でいた。子供たちは皆、堕悪座駆例路と遊びに校庭に出ていったのである。堕悪座駆例路は既に全校生徒の人気者。とても今さら倒すとは言えない状況である。剣聖は、深いため息をつきながら外を見た。そして、ある事に気付きハッとする。
 …堕悪座駆例路が、いない…!?
 剣聖は慌てて窓に近づき校庭の隅々を見渡すが、いるのは子供だけ…堕悪座駆例路の影も形も無かった。
 剣聖は、状況を確認しようと外に出た。
「あっ、マントせんせーい!」
 子供の一人が剣聖に声をかけた。「マント先生」というのは、剣聖のあだ名である。
「どうしたんだお前たち…堕悪座駆例路は?」
 剣聖は率直に問う。すると子供たちは、校庭内にある滑り台の方を指差した。
「…滑り台?」
 剣聖は滑り台の方を見たが、パッと見いつもの滑り台と何ら変わりは無かった―――見覚えのある、独特な目が描かれているのを除いて。
「なっ…まさか…」
「さっき堕悪座駆例路が特技を見せてくれるって言って、滑り台と堕悪融合したんだよー。」
 んなムチャな―――!!
 そう思いながら、剣聖は呆然と滑り台を見ていた。
 座駆例路付き滑り台は、一人滑るごとにその形状を変え、子供たちを飽きることなく楽しませている。
 ……私は真剣に考えすぎだったのか…?
 楽しそうに遊ぶ子供たちと、うれしそうな表情の座駆例路滑り台を見、ふと剣聖はそんな事を思った。
「堕悪武者も、別に全員が悪意を持っているわけでもないのかもしれないな…。」
 剣聖はポツリそうつぶやき、安心した表情で、次の授業の準備のため教室へと戻っていった。

 数日後、堕悪座駆例路はいつの間にか学校を去っていた。子供たちは残念そうで、中には寂しくて泣き出す子もいた。剣聖はそんな子供を優しく慰めた。
「堕悪座駆例路も、きっとそろそろ家が恋しくなったんだ。大丈夫、あいつも元気にやっているさ。お前たちが寂しそうな顔をしてると、次にあいつが来た時、がっかりしてしまうぞ。」
「はーい。」
 子供たちは剣聖の言葉を聞き、割とすぐに泣き止んだ。そして笑顔でこう言う。
「先生、堕悪座駆例路、きっとまた来るよね?」
 剣聖は、何も言わず、ただ笑顔でうなずいた。

 堕悪武者が全員あいつのようなら、この国もずっと平和なのにな…。
 剣聖はそう思いながら教科書を取る。
「よーし、授業を始めるぞー!」



 堕悪座駆例路は剣聖のいる小学校を去ってから、堕悪魔刃頑駄無の元に来ていた。
「じゃあ堕悪座駆例路、報告を聞かせてもらおうか。」
 堕悪魔刃頑駄無は、堕悪座駆例路の方を見そう言った。
「へい、楽しかったです。」
「…は?」
 堕悪座駆例路の返答に、魔刃は思わず聞き返した。
「子供と遊ぶの、楽しかったです。」
 魔刃はそれを聞き、かなりあきれたようであった。
「…剣聖頑駄無を始末するという任務は…?」
「…………(かなりの間)…………あ!」
 堕悪座駆例路は、どうやら任務の事などすっかり忘れていたようであった。
「………お前、もう堕悪武者やめて帰っていいよ…。」
 魔刃はそう言って、追い払うように手を振った。
 堕悪座駆例路は、うれしそうに帰っていった。



堕悪座駆例路とうっかりざくれろは、別人。堕悪座駆例路はこの小説オリジナルです。
……滑レロ【スベレロ】…(笑)


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